過去のtext
(読書記録)『歌集 死なない猫を継ぐ』(山中千瀬:著、典々堂、2025)
2026.02.12
短歌集です(※川柳も載っています)。
表紙が、グレーの優しい手触りの地に、パフェやケーキでお茶をする人二人を薄い青一色でかわいく描いたイラストが貼られています。このイラスト内の一人(髪型はツインテールで、パフェを口にしている)は、座っている椅子の脇にとげをたくさん生やした棍棒(野球のバットをゲバ棒に仕立てたもののようにも見える)を立て掛けていたり、持ち歩いているぬいぐるみ?に窓の外の景色を見せてあげていたり(外には謎の巨人がいる)、大切な人と語らう時間やそこで用意するお菓子の甘やかさと世界や社会の苛烈さとを、目に優しいタッチとトーンのイラストで感じさせてくれるように思います。
短歌の歴史、およびフェミニズムとしての/抵抗としての文学の歴史に残るべき一冊だと感じました。
暴力から生まれた暴力太郎から生まれた暴力太郎太郎、あたしは 山中千瀬
永劫回帰のなかで何度も死ぬ犬が何度もはちみつを好きになる
ちぎれそう 予告みたいにレズビアンと言えばこんなにとおい夕暮れ
光として降るしかない雨たちを連れ映画は何度も父母を産む
あたしたちは死なない猫を継ぐ種族 本棚の本まじらせながら
おっぱいの役割は<やわらかい>だけでいい 夏服のしろのやさしさ
死(スメルチ)が女性名詞と知るときの さいごに老女の手をとる女
リリックと離陸の音で遊ぶとき着陸はない 着陸はない
折句として作られた歌も多く載っています。引用一首目は最終章として置かれた連作「ぜんぶ夢の話(だとしても)」内の一首、引用二首目は全首植物の名前の折句で構成されている連作「花図鑑より」内の一首。
それはなお続くはるさめ 銀河まで寄ろうそのあと嘘をゆるそう
わー、みんなすばらしい幽霊となり群舞のなかにさよならなんだ
また、この歌集の広告が雑誌「ビッグイシュー」に、著者ご本人により出稿されていたことがありました。画期的なことだと感じます。